*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 村上さんはその可愛らしい顔を歪め、私をこれでもかと言うほどに睨みつけている。その顔は真っ赤になっていて、肩はプルプルと小刻みに震えている。

 なぜ彼女がそんなふうに怒っているのっかさっぱり分からない。  
 けれど、彼女を怒らせているのは間違いなく私なのだろう。

 困っているデンマークのご婦人の問題を早く解決してあげたいのに、村上さんが怒って睨みつけているからそれを無視することも出来ず、私は身動きが取れなくなってしまった。

 隣にいるご婦人もただ事ではない村上さんの様子を怪訝そうな顔をしている。

 私は一瞬で決めた。

 (村上さんの怒りは後で聞こう)

 視線をデンマークのご婦人に戻した私は、

 「Hvad gjorde dig i problemer?(何にお困りでしたか?)」

 と訊ねた。

 村上さんの怒りの気配が強くなるのを感じたが、そっちを敢えて見ないようにする。

 我ながら片言に近いゆっくりとしたデンマーク語でしか話せなかったけれど、それでもなんとかご婦人に通じたようで、話を聞くと、彼女は夫とここに来たらしいのだが、夫は他の用事で別の場所に行っていて、一人で会場に向かうことにしたのだがどこに行けば良いのか分からないらしい。

 それなら私も同じ場所へ行くので一緒に行きましょうと言うと、彼女は私の両手を握りしめ、何度も「Tak(ありがとう)」と言ってとても喜んだ。
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