*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「杏ちゃん、早番だったでしょ?もう昼休憩に入ってね。」
 
 イベント会場の片付けが済んだところで、千紗子さんにそう声を掛けられて時計を見ると、時刻は十一時半を少し過ぎた所だった。

 「もうこんな時間なんですね!でも、千紗子さんも開館前に出勤してるのに、私が先に休憩に入っちゃっていいんですか?」

 連休の山場となる今日、図書館員全員が開館前から出勤していた。
 もちろんいつも通りに早番と遅番のシフトが組まれているのだけど、早番のメンバーはいつもの出勤時間よりも更に早く、遅番のメンバーも開館前までにはみんな出勤してきた。

 「もちろんよ、杏ちゃん。お昼休憩くらいはシフト通りに回さないと、後が詰まっちゃうから気にせずに休憩に入ってね。それに、杏ちゃんには待ってる人もいるみたいだし、ね?」

 「え?」

 ニッコリと微笑んだ後、千紗子さんが顔を向けたその方向に、自然と目線で追うと、

 「しゅっ、修平さん!?」

 二階の廊下から見下ろした書架の間に、本を手に取って見ている修平さんの姿があった。


 「修平さん?」

 千紗子さんに教えてもらってすぐに、私は階段を駆け下りて一目散に彼のところに向かった。
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