*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
4. The first argument 



 目を開けると、見慣れたベッドの上にいた。

 (夢?…もしかして全部夢だったの?)

 ひどく頭が重くて、はっきりと考えられない。

 (今、何時だろ……)

 目覚めたばかりで視界がぼんやりとしているから、手の甲で目を擦る。
 すると少し離れた所から声がした。

 「そんなに擦ったら、目が腫れるよ。」

 声の方を向くと、パソコンデスクの前に座って、こちらを振り向いている修平さんがいた。

 「体、辛くない?」

 椅子から立ち上がると、私の方に歩いてくる。
 ベッドサイドにそっと腰を下ろした彼が、私の額をそっと撫でた。

 「まだ、熱あるな…」

 私よりも体温の高い彼の、いつもは温かいその手が、ひんやりとしていて気持ち良い。
 その冷たさにうっとりと目を閉じると、額から頬に掛けてなぞるように手を動かしながら、彼は言葉を続けた。

 「覚えてる?杏奈は図書館で倒れたんだ。」

 「え?」

 「記憶にない?」

 そう言われて、「あ。」と声が出た。
 
 (あれは夢じゃなかったんだ…)

 夢の中の出来事かと思ったけれど、そうではないらしい。
 その続きを思い出そうとするけれど、頭が重くて思い出せない。
 
 そんな私の様子を見ていた修平さんが、私の頬に手を置いたまま口を開く。

 「なんとなく嫌な予感がして、出先の帰りに図書館に寄ったんだ。雨宮さんと話している杏奈が見えたから、今日は声を掛けずに帰ろうかと思ったら、杏奈が急にふらついて…俺が一歩遅かったら床に体を打ち付けるところだったんだぞ。」

 そう告げる声が、珍しく怒っている。
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