*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「ごめんなさい……」

 低い声に体が縮こまる。

 一緒に暮らし始めて良く分かったのだけれど、修平さんはいつも穏やかで優しい。
 私をからかったりするちょっと意地悪な面もあるのだけれど、最後は一緒に笑い合ってしまうようなことばかりだ。
 そんなふうな毎日なので、彼が私に対して怒った声をほとんど聞いたことが無かった。

 (無理しないで、って言われてたのに、守れなかったから怒られるのも当たり前だよね…)

 あんなに心配して世話を焼いてくれた彼の手を、更に煩わせてしまったことを後悔する。
 
 (私、何にも出来ない子みたい…)

 体調管理すらままならない自分が情けなくなって、目頭が熱くなった。
 じわじわと瞳に溜まる水滴を、なんとか止めようとするけれど止められずに、掛け布団の端をギュッと握る。

 すると、その手の上に、そっと大きな手が重ねられた。

 涙がこぼれないよう瞬きを我慢していた瞳を見張る。
 視線を重ねられた手から彼の方に向けると、さっきの声とは裏腹に、眉を下げて優しい瞳で私のことを見つめている修平さんがいる。

 彼と目が合った瞬間、耐え切れず瞼が動いて、涙が一滴、ポロリとこぼれた。
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