*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!


 目的のブランジェリーは、マンションの一階が店舗になっていて、ガラス張りの壁越しにお客さんで賑わっているのが見えた。

 「アンジュ、ちょっとここで待っててね。」

 テンポ脇に置いてあるベンチの脚に、アンジュのリードを括りつける。
 こうしてリードを繋いでおかなくても、彼女が勝手にどこかに行ってしまう心配はないのだけど、犬が苦手な人もいるだろうからと思って、『繋ぐ』という体裁を取った。

 店内からも見える場所だし、万が一誰かがアンジュに悪戯をすることがないように、気を付ければ大丈夫だろう。


 アンジュに声を掛けた後、店内に入ると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。

 修平さんが出張に行っているこの数日間、私の食欲は日に日に落ちていて、朝は食パンを一切れ、昼はコンビニのおにぎり、仕事から帰ってきた後は佐倉さんが作り置きをしてくれた常備菜を軽く摘まんで終わらせていた。今朝に至ってはコーヒーだけだ。

 焼きたてのパンの香りが忘れていた空腹を思い出させる。

 (今日のお昼と明日の朝に食べよう。)

 『当店人気NO.1』と札のかかったクロワッサンを、トレーに乗せた。


 アンジュのことを時々確認しながら選んだパンを、レジに持って行く。会計が終わって振り向くとガラス張りの壁の向こうに、ベンチの横に座るアンジュと、その隣でアンジュを撫でる女性の姿が見えた。

 その女性の横顔は長い髪が邪魔して見えない。けれど、私はその人が誰なのか、すぐに分かった。

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