クールな御曹司の甘すぎる独占愛
◇◇◇
「奈々さん、大変です! 大変!」
午後の休憩を終えた明美が、ただならぬ様子で奈々に駆け寄る。肩を上下させて呼吸を弾ませ、目はキラキラと輝いている。このままどこかへ走って行きそうな勢いだ。
「いったいどうしたの?」
それとは対照的に奈々がおっとりと聞き返すと、明美は握り拳を両手で作り、それを上下にぶんぶんと振った。
「撮影が!」
明美のテンションが見る間に上がっていく。鼻息まで荒い。
「え? 撮影?」
「映画のです! 映画のロケ隊が来てるんですよ!」
「どこに?」
「どこって、ロビーですよ! ロビー!」
それでさっきから通路を大勢の人が行き交っているのかと奈々は納得する。