子爵は新妻を独り占めしたい
カーテンのすき間から差し込んでいる日差しに急かされるように、紗綾は目を開けた。

見知らぬ部屋の見知らぬベッドで眠っていたことに一瞬だけ驚いたものの、すぐに自分の状況を理解した。

(そうだ、私はここでお世話になることになったんだ…)

久しぶりに温かくてふかふかなベッドのうえで、目覚まし時計をかけないでぐっすりと眠れた。

「――んんーっ…」

紗綾は両手を上にあげて伸びをすると、躰を起こした。

(久しぶりにゆっくりと眠れたな…)

自分の躰が軽くなったことを感じながら、紗綾はベッドから降りた。

カーテンを開けて太陽の日差しを躰に感じた。

こんなにも静かで穏やかな朝を迎えたのは、何年ぶりだろうか?

この世界にきてから久しぶりに体験することだらけだと、紗綾は思った。
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