国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
ミリアンが住んでいた村が火事になったのは、どこかの国から襲撃に遭ったのだと、のちにそんな風の噂を聞いた。あんな小さな村を襲撃する意味がどこにあったのか、いまさら考えても仕方がないと、ミリアンは長い睫毛を落とした。

「今から王都へ行くのかい? 本当はお前を王都へやるのは気が進まないのだが……」

ロパは長く伸びた髭を指でこよりながら心配そうに浮かない顔のミリアンを見た。
その声に、ミリアンはハッとして笑顔を作る。

「はい。今日も忙しくなりそうです。やっと見つけた私にできる仕事ですし……教会のためにも。大丈夫、ここから王都へ行くにしたって民家も多いし、平気ですよ」

夕方から夜にかけて忙しくなる王都の大衆食堂で、ミリアンは給仕の仕事もしている。

教会にいる子どもたちは何らかの理由で孤児になり、寂しい思いを隠しながら生活をしていた。孤児たちの生活を支援するローデン教会も国から助成金を受けてはいるが、子たち全員がそれなりに暮らしていくためにはまだ不十分だった。それを知っているミリアンは、どの国よりも給金のいい王都で仕事をすることを決めたのだった。

しかし、ロパは豊かなラタニア王国といえども、たくさんの人が集うがために一部分で治安も乱れている事情を常に心配してやまなかった。
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