国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「レイ様! レイ国王陛下!」

表の庭先から声がしてミリアンはハッとなる。レイがその声にハァ、とため息交じりに息を吐いて苦笑いを浮かべた。

「まったく、休まる時間がなくて困るな。お前は好きなだけここにいるといい」

長いマントを翻してレイが背を向ける。

「また会おう。夜が更ける前に部屋に戻れ」

「はい」

肩越しに振り向いて言うと、レイは温室を後にした。

(不思議な人……)

冷血で利己主義で傲慢な国王陛下の背中を見つめていると、一抹の不安と寂寥を感じずにはいられなかった。

――お前がこの国にとって有益な存在だからだ。

ミリアンは流れる噴水の水音を聞きながら、得体の知れない切なさに身を縮めて両腕を掻き抱いた――。
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