国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
頬を伝う雫をぐっと拭うと、ミリアンの異変に気が付いたレイが彼女に視線を落とす。

「どうした?」

「すみません、自分でもわからなくて……ただ、私……不安なんだと思います。これから自分がどうなっていくのか先が見えなくて」

身内を失い、信頼していたロパにも見捨てられ、表面には出さなかったものの耐え難い孤独を感じていた。すると、全身をふわりと暖かなものに包まれた感触がしてミリアンは驚いて顔を上げた。

「案ずるな。言っただろう、お前を襲う恐怖があれば、私がすべて振り払う。お前に害をなすものがあれば、全身で守ろう」

今までにないレイの優しい柔らかな声音にミリアンの濡れた瞳が揺らいだ。抱きしめられ、そして自分を見つめる慈愛を含んだ視線と合う。

「なぜです? なぜ、レイ様が私にそんなことを?」

「それは……」

どことなく歯切れが悪くレイが言葉を濁らせ、いったん外した視線をミリアンに向ける。
すると先ほどとは違い、温度を感じない双眸が揺れてレイがミリアンに冷たく言い放った。

「お前がこの国にとって有益な存在だからだ」

胸が痛い。なぜかミリアンはそういわれてひどく傷ついた。

「離してください……」

腕を解き、身を離すとレイに触れていた部分から熱がすっと引いていくのがわかった。その時。
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