国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
ミリアンが返事をするとドアが開き、侍女に案内されてひとりの老人が部屋に入ってきた。侍女は頭を下げるとそのままドアの扉を静かに閉めた。

「突然すまないね、初めまして。ミリアン殿、わしの名はラウラス。王宮のお抱え薬師だ」

とうに八十は超えていそうな小柄の老人は、白くて長い髭を生やし、ロパ牧師を彷彿とさせる。円背した背中をとんとんたたきながら、しわがれた声でミリアンに話しかけてきた。

「私をご存知なのですか?」

物腰は柔らかだが突然の見知らぬ老人の来訪にミリアンは警戒する。そんな雰囲気を察したのかラウラスは、ほっほと笑いながら長く伸びた白い髭を撫でた。

「そう警戒せんでも捕って食いやしない、レイ国王陛下からミリアン殿の話は聞いている。まぁ、あまりこうして悠長にしていられんのだが……今朝方、国王陛下が何者かに刺されてな」

今まで温厚な笑みを浮かべていたラウラスがすっと曇り顔になる。

「え……レイ様が?」

どこにいても一寸の隙もなさそうな彼だが、負傷していると聞いてミリアンは椅子から立ち上がった。
< 157 / 295 >

この作品をシェア

pagetop