国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「レイ様! やめてください!」

咄嗟にミリアンはレイの腕にしがみついて首を振る。

「なぜだ! この男こそお前の母の仇なんだぞ!?」

「私はもう、誰のことも憎みたくありません。憎しみからは何も生まれない!」

凛としたミリアンの声が響き、レイはその言葉に目を見開いたまま固く握った拳から力を抜いた。

「ほら、やっぱりレイ様は母を殺してなんかいなかった。それがわかっただけで……もういいんです」

きっとセルゲイは病に倒れた妻をなんとしてでも救いたかったに違いない。しかし、財政が不安定になってしまったラタニアでは満足に薬を買うこともかなわなかった。その無念は痛いほど身に染みた。だから、セルゲイがたとえ母の仇だったとしても、もう誰のことも恨まない、そう心に誓った。

(そう、恨むとしたらただひとり……)

ミリアンは徐にジェイスに歩み寄り、穏やかな表情を浮かべた。
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