国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「ミリアン様。お食事が済まれましたら、お着替えのお手伝いに参ります」

「マリーア。ちょっと待って、着替えって……私、この服でいいわ」

白地で丈の長いワンピースに、革の紐でクロスさせて前を締める赤のベストという、平凡な町娘らしい格好が一番着慣れている。いきなり着替えと言われても戸惑う。

「ミリアン様にはもっと上等のお召し物を、と国王陛下から言いつかっております」

「……そう」

きっとこの服装はラタニア城内では庶民すぎて不適切なのだろう。要するに、“みすぼらしい”ということだ。ミリアンはそう憶測し、とりあえず朝食に手を付けることにした。

昨日からほとんど何も口にしていなかったミリアンは、自分でもはしたないと思うくらいあっという間に用意された朝食を平らげてしまった。

「お口に合いましたでしょうか?」

「えぇ、とても……。あんなに美味しいパンを食べたのは生まれて初めてよ」

教会で出されるパンはいつも売れ残りの安物でパサついていた。しかし、朝食に出されたパンは、腹を満たすために食べていたようなものとは大違いで、香ばしい香りが今も鼻に残っている。
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