はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「祈りの場で、大声を出さないで。」



初めて聞く声がした。



他に人がいないと思っていたから、驚いて声の方を向く。



そこには、背中の半分を覆う程のウェーブヘアをした小柄な生徒がいた。



「申し訳ございません、聖愛(せいあ)様。」



さっきまでの威勢はドコへ行ったのか、私に向かって叫んだコは恐縮して頭を下げた。



どうやら、私たちは聖愛の祈りを邪魔したようだ。



言い争いをするにはふさわしくない場所だし、とりあえず外に出よう。



私がドアに手をかけると、聖愛が話しかけてきた。



「あなた、翠子さんにロザリオをお返しするつもり?」



ここの生徒は先輩を“様”付けで呼ぶから、聖愛も3年なのだろう。



「そう…ですね。

少しの間、預かるだけだと思ってましたから。」



イタイ伝統でも、翠子に憧れてるコにしてみれば、ロザリオの交換は“特別”の証。



だから、真剣なわけで…。



「同情?

ロザリオを返したところで、翠子さんはこの子に渡したりしないわ。」



それを聞いた翠子のファンは、涙目で走り去った。



聖愛はそれをチラッと見ると、続けて言う。



「翠子さんは、1人だけなんて選べないもの。

学園のみんなが大好きで、みんなに学園生活を楽しんでもらいたいから、生徒会長になった人よ。

あなたにロザリオを託したのは、他に理由があるのだと思うわ。」



他の理由…。



私はロザリオを眺めながら、翠子に聞いてみようと思った。








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