はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
俯く私に、坂下が声をかける。



「見なかったことにして、帰りましょう。」



坂下が私の手を取って歩きだすから、その手を放したくない私は坂下に着いて行く。



駐車場に着くと、坂下が助手席のドアを開けてくれた。



坂下の車に乗るのは、久しぶり。



私が乗り込むと、坂下は助手席のドアを閉め、運転席に回った。



「奥さんと、離婚…するの?」



「今は、何も考えられません…。」



坂下はそう答えると、タバコに火を点けた。



一服した途端、坂下が激しく噎せた。



「パパ!」



「桐生…さん、パパじゃ…ゴホッ、ないでしょ…。」



火を消す余裕がないのか、坂下はタバコを手にしたまま咳こむのを止めない。



私は坂下の手からタバコを取り上げると、火を消す。



まるで何かの発作のような…治まらない咳に、私は不安になる。



坂下の背中をさすりながら、救急車呼んだ方が良いのか迷っているうちに、落ち着いたみたいだ。



「少し、休ませてください。」



あれだけ咳こんだのだから、当然だろう。



坂下は眼鏡を外し、シートを倒す。



程なくして、眠りに就いた。



坂下は私が寝込みを襲うとか、考えてないみたいだ。



やっぱり、私は坂下にとって娘の代わりでしかないんだと感じた。



無防備な坂下を前にして、自分を満たすコト、色々してみたかったけど…。



坂下にバレたら、軽蔑されるとか



こんなやり方で手に入れたとしても、虚しさしか残らないとか



そう考えると、できなかった。



でも…。



「これ位は、許してくれる?」



そう呟くと、私は坂下の胸に顔を埋めた。



坂下が起きちゃうんじゃないかと思いつつ、溢れてくる涙は止まらなかった。









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