はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
ファミレスを出た私は、先輩たちの



「送ろうか?」



という言葉を辞退して、一人で駅に向かう。



途中、ホテルの前で坂下を見かけた。



何で、こんなところに?



声をかけようと思ったけど…、止めた。



電話中だったから。



ガラス張りのホテルの中に視線を移すと、父が携帯を手にしてる不倫相手の女の腰に手を回してた。



ちょっと、ジイサンたちにバレたらどうするつもり!?



私の心配をよそに、女の電話が終わった途端、中の2人はエレベーターに向かっていった。



「何考えてるのよ…。」



「桐生さん、どうされました?」



私に気づいたのか、携帯を閉じた坂下が話しかけてきた。



「あ、えっと、父が…。」



どう説明したら良いか困った私は、坂下と父を交互に見た。



坂下はホテルの中を一瞥すると、口を開いた。



「和歌の本当の父親は、あの方だったのですね。

桐生さんと、そっくりな理由も頷けます。

なるほど、よく似ている…。」



…え?



「あの女の人って…。」



「私の妻です。」



いとも簡単に、あっさりと言いのけるから…。



すぐに言葉が、出なかった。



目の端にエレベーターが開くのを捉えた私は、ホテルの中に入ろうとした。



だけど、坂下の手はそれを許そうとしなかった。



「放して!」



腕に絡みついた坂下の手を振り解こうとするが、ビクともしない。



「今ならまだ間に合う、奥さんのやってること見過ごすの?」



「桐生さんが、ご自分のために2人のもとへ行かれるのでしたら、止めはしません。

しかし、私のためだというのでしたら…余計なお世話です。」



余計なお世話だと言われて、遣る瀬ない気持ちになった。










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