はつ恋【教師←生徒の恋バナ】

・若菜サイド

お兄ちゃんが亡くなって、最初のお正月を迎えた。



年賀状出してないし、完全に喪に服すのかと思いきや、書道家の集まりには顔を出すようだ。



今回は、私と書生も行かなきゃダメらしい。



私に婿取って跡継がせるからヨロシク…的な、挨拶も兼ねているんだろう。



赤い振袖を着せられ、ジイサンたちに連れられて行った。



会場は知らないオジサンばかりだから、坂下の恩師の福沢先生を見かけた時はホッとした。



「ご無沙汰しております。」



「おぉ、桐生先生のところの…。

この前まで高校生だと思ったのに、大人っぽくなったねぇ。」



まだ、高校生ですが?



しばらく話していたけれど、福沢先生は坂下が学校を休んでることさえも知らなかった。



往きは父の運転だったのに、帰りは…。



「たまには、2人で過ごしたら?」



母の余計な一言で、書生とデートさせられる羽目になった。


ジイサンが了承してしまえば、どんなに嫌でも父は反対できないのだろう。



「夕飯までには、帰ってきなさい。」



せいぜい、そう言うくらいだ。



ジイサンたちからお墨付きを貰って調子に乗ってるのか、書生は車を飛ばす。



コイツの運転は、急ハンドルに急ブレーキ…と、酔いやすいから嫌い。



海岸通りをひたすらスピード上げて走る書生が、ロクでもないことを言う。



「お嬢さん、このままホテルにでも行きますか?」



「アンタ、馬鹿?」



その瞬間、急ブレーキがかかった。



「婚約者に対して、馬鹿言うか?」



「振袖が着崩れたまま帰ったら、父がどういう反応示すか考えないワケ?」



「ふん、まぁ良いさ。

今日のところは、キスで勘弁してやる。」



書生が顔を近づけてきた時、ヤバいと思った…けど、遅かった。










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