はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「リバってんじゃねぇよ!降りろ!!」



書生が、車から私を追い出す。



アスファルトに身体を打ちつけた途端、車のドアが閉まる音が聞こえた。



身体を起こした時には、車は走り去った後だった。



うそ…。



財布も携帯も、車の中に置きっぱなしなんだけど!



車酔いの中、家まで相当距離あるのに歩けってか!?



かといって、車の通りが少ない場所にこのまま座り込んでいたところで、事態が好転するとは思えないし…。



少し遠いけど、公園が見える。



この臭いの元を洗い流せる水道と、身体を休ませるベンチくらいはあるだろうと思い、歩き始めた。



少ししか経ってないのに、草履のせいで足を痛めた。



「はぁー、もう無理…。」



しゃがみこんでいると、通りかかった外車が数メートル先で停まった。



車の後部座席から、オジサンが顔を出して話しかけてきた。



「お嬢さん、送ってあげましょうか?」



知らない人にそう言われて、ホイホイついて行くワケがない。



運転席から誰か降りてきたので、断ろうと思って見上げると…。



「桐生のお嬢様ではありませんか、何かあったのですか?」



喬木さんだった。



ワケを話すと、後部座席にいたオジサンは喬木さんが仕える家の主人だったようで…。



「喬木の知り合いなら、家で休ませるといい。」



喬木さんがいるなら安心だろうと思い、助手席に乗り込んだ。



着いた先は、広い敷地に建てられた洋館。



オジサン…もとい、国府(コウ)さんのお言葉に甘えて、客間の寝室で休ませてもらう。



着物を脱ぎ捨て、用意してもらったガウンに袖を通した。










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