はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
一方、お喋りを中断させられた先輩たちはというと…。



特に、文句の類は言われなかった。



アークの先輩は私が来たときに一瞬、難色を示していたけど、今は澄ました顔をしていた。



さすがお嬢様とでも言うべきか、心の中を無闇に表には出さない。



アンジェ先輩の方は、ずっと私を見てたみたいだ。



睨みつけるというよりは、観察ってカンジで。



だから、アンジェ先輩と思いっきり目が合った。



なんとなく、その時に分かってしまった。



彼女も、坂下のことが好きなんだ…。



…も?



何で、『も』なの?



それって、私…も?



そう考えた瞬間、頬が熱くなった。



私は坂下に一礼すると、職員室を出た。



バカ、私の大バカ!



坂下には、ちゃんと奥さんいるんだよ。



それに、坂下は私を死んだ娘の代わりにしか思ってない。



こんな、坂下を“男の人として好き”なんて想いは、勘違いだったことにしよう。



坂下はあくまでも、ワカのパパ…。



私は自分に言い聞かせながら、廊下を歩いた。



その時、焼きそばを買ってきた蒼とすれ違った。



「桐生、お前は聡明だよ。」



私が振り返ると、蒼は続けて言った。



「だけど、頭で考えたとおりにいかないんだよな、心ってさ…。」








< 87 / 286 >

この作品をシェア

pagetop