だから何ですか?
亜豆と付き合うのであれば俺も早々に今までの経験や応用を忘れるべきなんだろうな。と、腕を組み溜め息をつきながら思い悩んでしまう。
そんな俺を意味が分からないと言いたげな怪訝な表情で見つめ返していた亜豆も、横で響いたエレベーターの到着音にはその視線を動かしボタンに手を伸ばす。
ゆっくりと開かれる扉からは前に乗っていた人間の香水か何かの残り香がふわりと舞って鼻孔を擽った。
「伊万里さんも戻りますか?」
「・・・いや、俺もう少し煙草吹かして戻る」
ボタンを押したまま俺の同乗を確認して声をかけてくる彼女に、自分は乗らないと示してプラプラと手を振り片手では頭を抱え。
一回クールダウンで一人反省会をすべきだろう。
ああ、でも、海音がいるし厄介だな。なんて思って溜め息をついた自分の耳に、
「あ、・・・そっか、」
そんな風に、気がついた。と言いたげに響いた亜豆の声に特別意識なく振り返れば・・・、
「っ___」
これまた・・・予想外の衝撃。
だから・・・亜豆に惚れるのはやめられない。
そんな事を思ってしまう不意打ちに与えられたキスの感触に応え返すのも忘れて不動になってしまった。