だから何ですか?




「俺・・・お前なんて嫌い」


「そう、嬉しいよ」


「・・・・」


「『嫌い』と言う形でも俺を意識してくれて」


「っ・・・」



本当に・・・・腹の立つ。


どこまでも・・・亜豆を知っていると示すような言葉の言い回し。


亜豆を模してなのか、亜豆が影響されてなのか、




『知ってます?好きも嫌いも相手を意識においているからこそ成り立つものだって』




そんな事を言った亜豆の姿が脳裏に浮かぶ。


その脳裏さえも覗き見たようにニッと口の端を上げる姿の憎たらしい事。



「・・・・はぁ。・・・亜豆・・連絡する」


「・・・おやすみなさい」



仕方ないと渋々受け入れた重苦しい溜め息を一つ。


姿を見せない亜豆にもどかしさはあれど、決して怒っているわけではないことを示し言葉を残してその身を玄関へ。


今度は純粋な意図で『おやすみなさい』と響いた声に後ろ髪を引かれつつ、止まることなく玄関に向かって靴を履いた。


その背後に海音の気配を感じていて、それでも敢えて無視を決め込んで。


振り返りもせずに『おじゃましました』と言葉を落とし玄関扉に手をかけたタイミング。



「秘密の匂いは良くも悪くも誘惑的だろ?」



まんまと、


そう、まんまとその言葉に意識を引かれた。


絡んだ、惑わすような笑みにしてやられたと眉根を寄せて、舌打ちを響かせると『もう何も聞くものか』と苛立った感じに外に身を出した。


< 204 / 421 >

この作品をシェア

pagetop