だから何ですか?
人気配がなかった冷たい空気の室内。
シューズクロークの上に放った鍵がガチャリと大きく音を響かせる。
それでもそんな音など耳に流し込んではいたけれど意識はしておらず、暗い玄関に入るや否や扉が閉まりきるまでに挿し込んだ乏しい明かりで捉えた姿を抱き寄せ、壁に縫い付けた時には暗闇に戻って呼吸も惜しいと貪るように口づけた。
「っ・・はぁっ・・はっ・・んん__」
余裕がない自分には痛い程鼓動を刻んでいる心臓で気がついている。
脈が速く逆上せる程熱も上がって、自分ではどうにもできない欲情を少しでも消化しようと食らいつくようなキスに逃して。
実際は逃すどころかどんどんと欲求疼いて苦しさが増した。
亜豆のペースまで配慮する余裕がないのがいい証拠。
必死に俺の口づけに応えようとしてはいても、やはり差は開いて今では酸欠状態の彼女。
下手な息継ぎで漏らす吐息や声に煽られて、更に体の密度を増してしまえば。
「っ・・はっ・・・いまっ・・・伊万里さん苦しっ・・」
「っ・・悪い、」
「はっ・・はぁ・・・そ・・んな・・逃げたり・・しませんから」
乱れた呼吸にとぎれとぎれの言葉を紡ぎ、余裕の無い俺を仕方ない人とばかりに笑ってくる姿に血が上る。