だから何ですか?


距離を・・・埋めてしまおうか。


そうだ、元々は小田とのその距離に関して迷っている段階であったのに、突如として予想もしない亜豆の介入があったためにおざなりであった。


手を伸ばして・・・触れてみようか。


手を掴んで意識を引いて抜け出すのもいいのかもしれない。


そんな感覚で僅かに動かした自分の腕。


視界に捉える姿を捕まえることなど造作もない距離。


造作もない・・・筈だったのに。



「あ・・れ?」



本当に・・・驚く。


伸ばしかけた手は彼女の姿に遠く及ばず。


距離を埋めようか。なんて思っていた癖にいざというタイミングに後押しのその意思は浮上しない。


逆に鮮明に頭に浮かんだのはつい先ほどの出来事だ。


思いだせば今この瞬間にその感触を思いだす。


絶妙な距離間で、絶妙な加減で、伸びて触れてきた彼女の指先。


触れたと言うには中途半端だと感じるほどの接触であったのに肌には異常な程刻まれ残っていたらしい。


控えめにジャケットに絡んだ指先が華奢だと思って見ていた事に今さら気がついた。


今そんな風に思い返すという事は見ていたその時も無意識に思っていたという事だ。



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