湖にうつる月~初めての恋はあなたと
『君ってわかりやすいよね』

「何がでしょうか?」

『本当は、俺の電話待ってたんでしょ?』

一気に顔が熱くなる。

そんなことあるわけないじゃない!って喉元まで出掛かったけどやめた。

電話だからこんなに動揺して真っ赤になってる姿は相手にはわからないもの。

だけど。

澤井さんがこの前私に言ってたように、自分の思うがままに言ってみたらどうなるんだろう。

「そうかもしれません」

言ってしまってから体中が沸騰する。後悔先に立たず。

『え?』

意外にも私のその返した言葉に澤井さんの方が言葉に詰まっている。

少しの沈黙の後、彼がフッと笑いながら言った。

『まさか君がそんな切り返しするなんて思いもしなかったよ』

「これでおあいこですね」

『いや、俺の完敗』

「それは・・・・・・」

何が完敗なの?その時ふいに彼が切り出した。

『今週末デートしよう』

「デート?」

『付き合ってるんだから当たり前のこと。じゃ、日曜日10時にA駅のセンターホール前に迎えに行くよ』

私が返事をし終わらないうちに「じゃ」と言って電話は切れた。

なんて強引なの!

初めて会った時とは全然違う。もっと紳士的な人だと思ってたのに。

いつの間にか澤井さんの手のひらの上で転がされているような気がしていた。

だけど、もしそうであっても全然嫌じゃない。

通話が切れたスマホをいつまでも見つめていた。



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