神獣の花嫁~かの者に捧ぐ~
カシャン、と、足もとで陶器の割れる音がした。
あまりのことに、立ち上がり前に踏み出したため、咲耶は無意識のうちに盃の置かれた膳を、蹴り飛ばしていた。
『なんだ? どうしたんだ、咲耶サマ?』
物音に驚いたらしい犬朗から声がかかったが、咲耶は真っ白な頭のまま手すりを越え舞殿のほうへ向かっていた。
咲耶の突然の振る舞いに、側にいた男たちが止めに入ろうとする。
咲耶を席に案内したあと、立ち去っていたはずの小太り“神官”が駆け寄ってくるのが、目の端に映った。
咲耶は、ただ、彼の仮の名を、叫ぶしかなかった。
「ハク!!」
呼びかけにも騒ぎにもなんの反応も示さずに、ハクコは舞殿の上でその身を震わせ、美しき白い獣の姿へと、戻ったのであった──。
あまりのことに、立ち上がり前に踏み出したため、咲耶は無意識のうちに盃の置かれた膳を、蹴り飛ばしていた。
『なんだ? どうしたんだ、咲耶サマ?』
物音に驚いたらしい犬朗から声がかかったが、咲耶は真っ白な頭のまま手すりを越え舞殿のほうへ向かっていた。
咲耶の突然の振る舞いに、側にいた男たちが止めに入ろうとする。
咲耶を席に案内したあと、立ち去っていたはずの小太り“神官”が駆け寄ってくるのが、目の端に映った。
咲耶は、ただ、彼の仮の名を、叫ぶしかなかった。
「ハク!!」
呼びかけにも騒ぎにもなんの反応も示さずに、ハクコは舞殿の上でその身を震わせ、美しき白い獣の姿へと、戻ったのであった──。