アシンメトリー
魔法の言葉
その日の夜、私の携帯のメールの着信音が鳴り響く。
受信ボックスを開くと、知らないメールアドレスと「今日はありがとう」の題名が目に入る。

そのメールアドレスは紛れもなくあの人だった。

私は枕に顔を押し付けて、自分の高ぶった気持ちを必死に叫んだ。

私とあの人にしかわからない秘密の会話みたいに思うと嬉しくて、胸がドキドキした。

何度もあの人の事を思い浮かべて言葉を考えながら、考えながら打ち直しては、また打っては文章を読み返す。
私がニヤニヤしながら携帯を見ていると、部屋のドアを開けて、母がそんな私の姿を呆れた顔で見ていた。

「何してんの？あんたもうすぐ、テストちゃうの？携帯ばっか見て、大丈夫なん？」

「うるさいな。」

私は不機嫌そうにそう言った。
母はため息をついて、ドアをゆっくりと閉めた。

わかっていた。
別にこの先のたくさんの出会いがある人生の中で、あの人は全てではなく、私は今将来が左右されるような大事な時期だって事も。


でも、携帯に返事が来るたびにあの人の姿が頭を霞めて胸がドキドキして、自然に顔が綻んだ。

私だけの為に発するメッセージを見ると、今までとは違う本当の好きだって感情が大きくなった。
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