彼氏の上手なつくりか譚





「川上と中越は……っと」


上川くんが辺りをキョロキョロしながら探す。


でも、この人だかりの中で、簡単に見つかるはずもない。


私たちは江戸時代の人間じゃない。現代人だ。スマホがあれば、待ち合わせなんて、たやすい。


「神社の鳥居の辺りにいるって」


真奈から来たLINEの内容を上川くんに伝えた。


「そ、そっか。よし、じゃあ、行くか……」


上川くんは少し緊張している様子。


それもそうか。人生を左右する可能性だってある、一大勝負の日なんだ。


緊張しすぎるのはどうかと思うけど、全く緊張しないのもよくない。


上川くんは前者だ。圧倒的前者。右手と、右足が一緒に出ていて、おもちゃのチャチャチャに出てくる、鉛の兵隊みたいになっている。




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