愛してるからこそ手放す恋もある
朦朧とするなか、始めに目にしたのは心配そうな母の顔だった。

あぁ、無事に終わったんだ…

兄達も「良かった良かった」と安堵の声をあげていた。

そして誠も「よう、がんばったなぁ?」と声をかけてくれた。

誠に会えた嬉しさか、手術が無事に終わった嬉しさなのか涙が流れた。

「もぅ終わったんや俺はここにおるさかい、もう少しおやすみ」と言って右手を握ってくれた。

再び目が覚めたのは19時を回ったところだった。側には私の手を握る誠がいた。

「誠?」

「あぁ、目覚めたか?」

「うん。お母さん達は」

「さっきまで居なさったけど、もう心配ないやろって帰りはったわ」

「そっか…誠ご飯は?」

「お昼はお兄さんと下の食堂で食べたわ。病院の食堂にしてはなかなか美味しかったでぇ」

「そっか…でも、もうお腹すいてるでしょ?私は大丈夫だから、帰っても良いよ?」

「なんや!?梨華は俺がおらん方がええんか?腹立つわ…」と言って椅子を立った。

え?誠怒ったの…?

「誠?」

「地下の売店行ってなんか買うてくる!ここで梨華に見せびらかして食うてやるわ!」

誠はいたずらっ子の様に笑うと病室を出ていった。

左手には点滴が繋がれ、指先まで冷たく感じる。でも右手は暖かい。ずっと誠が握ってくれていたなだろう。離した今も誠の温もりを感じる。

私はその右手にキスをする。

「誠ありがとう。愛してる」




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