副社長は花嫁教育にご執心


灯也さんの気遣いを優しいなと思いながら、昼間久美ちゃんに言われた“夜の灯也さん”のことが心に引っかかっていた。

久美ちゃんにも話した通り、灯也さんはスキンシップが好きな方だと思うのだけど、それはあくまで軽いレベルのものだけ。

軽井沢で熱を出した時はキスをされたけど、元気になった今もそれ以上のことは何もない。

灯也さん、疲れてるのかな? それともやっぱり私を気遣ってるの?

そんなことを考えて悶々としていたら、ベッドの中にいてもなかなか寝付けなかった。

そのうち、仕事を片付けたらしい灯也さんがやってきて、彼の方へ寝返りを打った私の目が開いていることに気付いた。

「眠れないのか?」

「はい。……あの、灯也さんに聞きたいことが」

「聞きたいこと?」

ぎしりと音を立てて、灯也さんがベッドに腰掛ける。

「その……いえ、やっぱりなんでもないです」

言い出したものの、どんな言葉で聞いたらいいのか見当もつかず、布団で半分顔を隠しながら天井の方を向いた。

「途中でやめられると気になるんだけど?」

眉間に皺を寄せ、ちょっと不機嫌そうな灯也さんに尋ねられる。


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