副社長は花嫁教育にご執心
お前を奪いたい
佐助が来店したのは、混雑のピークを過ぎた一時半ごろだった。空いていたので広い四人席に案内し、私が自らオーダーを取った。
それが済むと、私は接客スマイルをちょっと素の顔に戻して、改めて成長した佐助を見た。
仕事ではスーツも着るんだろうけど、今日はジーンズにパーカー、ニット帽というカジュアルな服装。それに、身長や顔つきもほぼあの頃のままである彼を見て、素直に思ったことを呟く。
「佐助、変わってないねえ」
「なんだよそれ。さすがにもう高校生のがきんちょには見えないだろ」
「まぁ、そうなんだけどさ。悪い意味じゃなくて、変わってなくてホッとしたってこと」
拗ねて口をとがらせてしまう佐助に、私は明るくそう言った。少し機嫌を直したらしい彼は、私の姿を下から上まで眺めてふっと笑う。
「まつりは、なんか変わったな」
「えっ。どこが? 私のほうこそちっとも成長してないと思うんだけど」
「どこがって言われたら困るけど……なんつーか、男いるだろって感じ」
こんな軽い雑談の流れで図星を突かれると思わず、不覚にも頬が赤くなるのを感じた。
さ、佐助ってば、どうしてわかったんだろう。