副社長は花嫁教育にご執心


「まつりの友達に聞いたよ。ご両親が亡くなった時、一番そばにいて支えてくれた男友達が、お前の初恋の相手だって。そいつがこないだ電話してきた佐助ってやつで、だから結婚報告もしたくなかったんだろ?」

「ちょ、ちょっと待ってください。なんですかその話……」

その友達って誰?

私が佐助のことを話したのなんて、久美ちゃんくらいだけど……その時に佐助を初恋の相手だなんて、ひと言も言った覚えはないよ?

「佐助は友達です。昔支えてもらったっていうのは本当ですけど、だからって彼に恋愛感情を抱いたことは一度も――」

「……じゃあなんでそいつの胸で泣いたりした」

喉の奥から無理やり押し出したような、苦しそうに震える声が私に問う。

私は、“佐助の胸で泣いた”ということに心当たりもあったため、何と言ったらいいのかわからない。

でも、どうして灯也さんがそのことを知っているのだろう。直接、彼にあのシーンを見られていたのだろうか。


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