副社長は花嫁教育にご執心
最終章 

笑顔を咲かせて



お正月休みも明け、段々と日常のリズムを取り戻し始めたころ。

今日はちょっとSNS映えするんではないかと思える、“椿庵ちらし”という名の海鮮丼をまかないに、職場の休憩室に入った私は目を疑った。

「久しぶり」

目の前の椅子に、先月で退職したはずの、元同僚が座っていたから。

「く、久美ちゃん……?」

彼女は灯也さんに嫌がらせの件がばれたあと、自主的に退職したのだけど、その後何をしていたのかとか詳しいことは一切知らない。

ちなみに、彼女に便乗していたパートさんは、

“私は別にあんたをどうこうしようなんて思ってなかったのよ? でも、社員に言われたら断れないじゃない……!”

とまるで自分が被害者のように語り、特に退職することもなく今日も仕事をしている。

お姉さま方がそういう長いものには巻かれろ的精神なのは前からだし、その後特に悪さをする様子もない。

私もまぁいいやと大人の対応をすることに決め、特に事件もなく今に至る。

「おいしそー、その海鮮丼」

考え事をしていたらふいに手にしていたお皿を覗かれ、私は流れで久美ちゃんにも勧めてみる。


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