副社長は花嫁教育にご執心
「お、藤田さんと仲直りできたんだ」
「はい。きっと、灯也さんが彼女にいい職場を紹介してくれたおかげです」
その夜。昼間の出来事を話しながらリビングでくつろぐ私たちの前に、ひとつの箱があった。
それは何を隠そう、軽井沢旅行の時に注文していたマリッジリング。
ようやく送られてきたそれを灯也さんが丁寧に開封し、順番にお互いの手を取って、左手の薬指に嵌め合った。
「ああ……結婚したって感じです」
プラチナのリングと、その中央に三つ輝くダイヤの輝きを照明にかざしてしみじみ呟く。
そんな私に対し、灯也さんは指輪を眺めてもそれほどの感動がないというか、むしろちょっとため息交じりにこんなことを言う。
「俺は、やっとマーキングできたって感じだな」
その動物的な言葉に私は目をぱちくりさせ、そんな必要ないのにと思いながら彼の顔をのぞき込む。
「……前から思ってましたけど、灯也さんってなんでそんなにヤキモチ焼きなんですか?」
「知らないよ。……っていうか、しょうがないだろ? 最初はさ、まつりのことまだ十代だと勘違いしてて、俺犯罪者になっちゃうどうしようって悩んでた時期もあるんだからさ」