副社長は花嫁教育にご執心
「まつりちゃん、さっきのだけど……オーダーミスがいけないのはもちろんだけど、デシャップが気付かないのがまずかったよね、そのための仕事なんだから。だから、当面デシャップには社員だけが入ることにしようと思うんだけど」
「そうだね、私もそれがいいと思う。重大クレームが発生してからじゃ遅いし、パートさんに責任を取らせることもできないし。……それとさ、久美ちゃん」
私が自分のミスにいっさい心当たりがないことを伝えると、久美ちゃんは眉をひそめて呟いた。
「まさか、誰かがまつりちゃんの担当番号でわざと間違ったオーダー打ってるとか?」
「……可能性は低いかもしれないけど」
「あり得ないこともないね。まつりちゃんと支配人の結婚を妬んでとか」
女の嫉妬は怖いからねえ、とため息交じりに話した久美ちゃん。
そう考えると、私がミスするようになったのって、灯也さんが例の恥ずかしいメールを送って以降だっけ?
やだな、みんな表面上は何も言ってこないのに……。
犯人はわからないし気味が悪くて仕方ないけど、久美ちゃんが一緒に悩んでくれたことで、心は少し軽くなった。
今度また身に覚えのないミスが発覚したりしたら、真っ先に久美ちゃんに相談しよう。
それから、灯也さんと無事入籍を済ませたら、今度こそ久美ちゃんにだけは、ちゃんと先に報告しなきゃ。