副社長は花嫁教育にご執心
看病とマリッジリング
おでこのひんやりとした感触で目を覚ますと、目の前には大好きなひとの顔があった。
どうやら水で冷やしたタオルを乗せてくれたらしい。火照った肌にちょうどよい心地よさだと思いながら、ベッドの脇に座る彼に問いかける。
「私、熱が……?」
「うん。三十八度あった」
「昼間は何ともなかったのに」
「和香子に聞いたよ。長いこと外にじっとして、モアイ職人になってたって? たぶんそのせいだろ」
そっか……。どれくらい外にいたのか、そういえばよく時間を見ていなかったな。気づいたら和香子さんと小柳さんがいて、日も傾いていたって感じだ。
「……あの。皆さんは?」
「和香子はひとりで宴会。杏奈には小柳がついてるよ」
「小柳さん……?」
「ああ。あいつああ見えてお節介で面倒見の良い男だからなぁ。ま、杏奈に関してはそれだけじゃないだろうけど」
……と、言うことは。灯也さんも、小柳さんの気持ちは知っているんだ。
ぼんやりそんなことを思っていたら、灯也さんがすまなそうに私を見る。