オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
怒涛のような展開に、思わずあっけにとられて言葉を失う。

そんな私をよそに、“彼”は、

ギシリ……

慣れたようにベッドの端に腰かけると、


「シャワーは?」


っと聞いてきた。


「……?おうちで入るから…、いいデス」

「…あっそ」


“彼”は、そっけなく返事をしながら、両手をベッドに付き、

私に覆いかぶさるようにして覗き込む。


――冷たい視線。


ほんの少しだけ恐怖を感じた瞬間、

カーテン越しに夕日が部屋に入り込むと、“彼”をあっという間にオレンジ色に染めた。

薄茶の髪がキラキラ揺れてる。

黒色の瞳は鳶色を混ぜて艶めいて、長いまつ毛には光の粒が乗ってるみたい。


「…キレー」


思わず声が出た。

“彼”は、驚いた表情を浮かべ、しばらくの間、動かない。

かと思ったら、突然眉を寄せて笑いだした。


「ははっ、変なオンナ」

「……?」


――そうかなぁ…


首を傾げる。


だって、本当にそう思ったんだもん。

そんなに笑うコトないじゃん


少しむくれながら、“彼“を見る…と、まだ笑ってた。

さっき感じた恐怖が消える。

なんだか、ほっとしてしまって、つい、つられて私も笑ってしまった。


「あはは…」

「……っ」


ふいに、“彼”の周囲の空気が変わる。

時間が止まったような、静寂。

そして、その直後、室内に低い声が響いた。


「…名前…なんだっけ?」


聞いたこともないような、優しくて、甘い声。

心地好くて、なんだかふわふわした気分で、ぼんやりと答えた。


「…花美(はなび)」


そのとき初めて“彼”の名前すら知らないことに気付いた。


えーと、なんだっけ?

さっき、確か彼女が呼んでた……

そう、確か……
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