オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)
辺りは音ひとつしない。

握りしめたオレの左手に、胸ぐらをつかまれたまま、気を失った男がぶら下がってる。

手を開くと、殴られて腫れあがった顔を上に向けて、オレの足元に転がった。


ドスッ……


男の腹を蹴る鈍い音が地べたにしみ込む。

蹴られた体が大きく揺れて、力なく動きを止めた。

また、蹴り上げる。


ドスッ……


何度も、

何度も、


――クソッ!!


何度も……


「…さ…佐々くん…やめ……」


なんで……

止めんだっ……

なんでっ……!


こいつがっ…

こいつが、お前に何したと思ってんだっ!!


「佐々くっ……」


「うるせぇっ!!お前はだまってろっ!花美っ!!」


瞬間、悲しげに顔をこわばらせた花美に、思わず目をそらす。

花美のすぐ横に、両手を上げてバンザイの格好で男が不動のまま立っていた。

顔はオレのほうを向いているくせに、視線が合やしねぇ。

落ち着きなく、眼球だけが、ぎょろぎょろ動いてる。

ああ…、花美の両手を押さえつけてたヤツか……


「オイ……」


声をかけると、痙攣するように飛び上がった。


今さら、“俺は何もしてません”じゃぁねえぞ……


見据えたまま、一歩近づくと男の体はみるみる震えていく。


「…ス…すみま…」


ゴッ…!!

重い音がして、言葉が切れる。


「…佐々くんっ!!」


やっぱりというか……

花美が、


「どけっ!!」


倒れこんだ男の前に割って入った。


自分だって、震えて立てねぇくせに。

崩れるように、へたり込んでたくせに。

這うようにして出てきてまで、なんで、そんな男かばうんだ!!

必要ねぇだろっ!!!!

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