【完】死が二人を分かつまで
病院
穏やかな、日々だった。
手術ができる、最後のチャンスが近づいてる……。
あと2週間。
あと2週間ほどで、この主要は手遅れになる可能性があるそうだ。
なら、あと2週間、私はこの余生を楽しもうと思った。
自由な、痛みのない、優しさに溢れた病院で。
「ー哀華ちゃん」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
そこに居たのは、御門さんの奥さん。
有栖川のご夫婦にはお世話になっていて、私が唯一、なんでも話せる相手だった。
特に、奥さんの夏咲さんには。
「調子はどう?」
「いいとは言えません。吐いてばっかりだし」
「そっか。……あ。これ、頼まれてた本ね」
「ありがとうございます!」
にっこりと微笑みかけてくれる夏咲さんは、外の出来事を教えてくれる。
「ねぇ、」
「はい?」
「……ごめんね」
「え?」
急に謝られて、私は首をかしげた。
「その……私、何も出来なくて」
なんてことを言うんだろう。
とても、助かっているのに。
「出来てますよ。あなたの笑顔を見るのが、私の楽しみなんです。それに、幸せです。同性と、こんなに話したことはありませんから」
異性はもっとありませんけど、と、私は笑いながらつけ足して。
「じゃあ、いっぱい話そ!」
「はい!」
入院生活、1週間。
あなたは今、どうしていますか?