【完】キミさえいれば、なにもいらない。
俺がそう答えると、美空がまたムッとした顔をする。


「もうっ、最近の彼方よくわかんない!昼休みもすぐにどっかいっちゃうしさぁ」


「だよなー。急に本読み始めたり、真面目になっちゃって、変なの。今日もカラオケ彼方は行かねぇの?」


「あー、うん。ごめん、今日はパス」


「もう、またー?」


「しかたねぇな。俺らで楽しくやろうぜ」


俺が断ったら、美空や圭介たちはやれやれと言った顔をしながら俺の席から去っていった。


そこに環だけが一人残って、俺の前の席に腰掛けて、ボソッと一言。


「お前ってほんと、わかりやすいよな」


「えっ。そうか?」


「うん。なんか、思い立ったら即行動っつーか、一直線っつーか。何かに夢中になると、それしか見えなくなるタイプ」


「あぁ、よく言われる」


「それ、例の彼女に借りたの?」


環に聞かれて一瞬ドキッとする。


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