【完】キミさえいれば、なにもいらない。
その時、突然目の前に誰かが現れて、声をかけられた。


聞き覚えのある声にドキッとして、顔を上げる。


すると、そこに立っていたのはなんと……。


「えっ?」


私が昨日振ったはずの彼だった。


「い、一ノ瀬、くん?」


ウソ……。まさか、昨日の今日でこうやってまた話しかけてくるなんて。


てっきりもう来ることはないと思ってたのに。


だけど、私がそれ以上に驚いたのは、彼の容姿だった。


あれ?一ノ瀬くん……いつもとなんか雰囲気が違う?


よく見ると、髪が少し短くなってるような気がするし、耳からピアスが消えてるような気がするし、なんていうか、制服の着こなしとかも、いつもよりきちんとしてて……。


一体どうしちゃったんだろう。別人みたいなんだけど。


私が驚きのあまり言葉を失っていると、一ノ瀬くんはニッと白い歯を見せ笑ってみせる。


「どう?ちょっとはチャラくなくなった?」


その言葉を聞いて、私は昨日の自分の発言を再び思い出して、ハッとした。


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