【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「……はぁ」


朝からため息ばかりついている。


文庫本を開いていても、ただ文字を眺めているだけで、内容が全く頭に入ってこない。


昨日の放課後、図書室で一ノ瀬くんに告白されて、私ははっきりと彼に断った。


それ自体は後悔していないつもり。


だけど、なぜだかずっとそれ以降モヤモヤしているのだった。


あの時の一ノ瀬くんの悲しそうな顔が、忘れられなくて。


あれを見たら、やっぱり彼は本気だったのかも、なんて思ってしまった。


真剣に告白してくれたのかもしれない。


それなのに私は、チャラチャラしてるだとか、遊んでそうだとか、余計なことを言ってしまって、彼のことを傷つけてしまったに違いない。


そう思うと、ひどく胸が痛い。


もっと、ほかの断り方はなかったのかな。


でも、チャラチャラしてるって思ってたのは本当だし、実際にそういう噂だって聞いたことがあるし……。


って、私ったら何いつまでもクヨクヨと考えてるの。


「おはよう」


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