【完】キミさえいれば、なにもいらない。
そんなふうに話す声が聞こえてきて、恥ずかしくて泣きそうになる。


だけど、それでもどうしてもあきらめたくなくて。


私は必死で探し続けた。


だけど、どこにあるのか全然わからないし、見つかる気配もない。


これはもう、最悪自分で溝の中に入って手で探すしか……。


いやでも、それはさすがに危険すぎるし、絶対この中に落ちてるとも言いきれないし。


どうしたらいいんだろう。


私ったら、ほんと何やってんだろう。


どうしてこんな場所でバレッタを外しちゃったのかな。


自分で自分が嫌になる。


このまま失くしてしまったらどうしよう。


こんなことなら学校につけてくるんじゃなかったかな。


お母さんからもらった、大切なバレッタなのに……。


思わず目に涙がにじんでくる。


そしたらその時背後から、誰かが駆け寄ってくるような足音が聞こえてきて。


何かと思ったら次の瞬間、肩をポンと叩かれ、声をかけられた。


「雪菜!どうした?」


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