【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「そ、そう?でも、あんまり期待しないでね」


「えー、期待するよ。雪菜はたぶん何着ても可愛いし」


「……なっ、それは言い過ぎでしょ」


私が照れたように返すと、もう片方の手をそっと私の手の上に重ねてくる彼。


「楽しみにしてるから」


笑顔でそんなふうに言われたら、なんだかドキドキしてしまう。


彼の言葉一つ一つに、不思議なくらい心が反応してる。


この前陸斗先輩にはあんなことを言われたけれど、やっぱり私には、彼方くんが先輩の言うような不誠実な人には見えない。


騙されてるだなんて、いくらなんでも言いすぎだと思うし。


だから、余計なことは気にせずに、目の前で優しく微笑む彼の言葉を、気持ちを、信じたい。


そう思っていた。


.





.



< 297 / 370 >

この作品をシェア

pagetop