【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「あ、うん……。偶然そこで会ったから」


「そっか」


なんだろう。彼方くんに陸斗先輩と一緒にいるのを見られるのは、いまだにちょっと気まずいというか。


以前、ヤキモチを妬かれたことがあったからかな。


すると、彼方くんはそこで少し考えたような表情をしたあと。


「あのさ……ずっと思ってたんだけど、もしかして、雪菜が昔好きだったのって、あの人?」


「……えっ!?」


突然、思いもよらぬことを聞かれたので、心臓がドクンと飛び跳ねた。


ちょ、ちょっと待って。なんで……。


彼方くん、どうしてわかったのかな?


「え、えーと……っ」


驚きのあまり、動揺を隠せない私。


だけどもう、この際バレてしまってもいいかな。昔のことだし。


彼方くんには以前自分の過去の恋愛話をしてしまった手前、正直に話したほうがいいだろうし、今さら隠すことじゃないよね。



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