【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「なんかお前も最近小うるさくなったよな~。昔はあんなに可愛かったのに」


お兄ちゃんが今度は私の頭をわしゃわしゃと撫でまわしながらぼやく。


「きゃっ、ちょっと!お兄ちゃんがちゃんとしないのがいけないんでしょ!」


思わずまた言い返したら、璃子がますます楽しそうに「あはは」と笑いだした。


お兄ちゃんと話してるといつもこんな感じで、兄妹でコントでもやってるみたいな気分になる。


「おーい、遥!」


するとそこで、どこからかお兄ちゃんのことを呼ぶ大きな声がして。


私はその声を聞いた瞬間、ドクンと心臓が飛び跳ねた。


「あ、陸斗だ」


お兄ちゃんがその人の姿を見つけ、手を上げる。


おそるおそる自分もその視線の向こうに目をやると、いつもどおり眼鏡をかけ、サラサラの黒髪を綺麗に整えた長身の先輩の姿がそこにあった。


そして隣には、ロングヘアの美人な女の先輩が並んでいる。


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