黒犬




















騒がしい…
着替えて紗智栞さんのお見舞いへ行く準備をしていた
「何かあったんですか。」
慌ただしく動く漣の人に話しかける
「うんちょっとね。」








そう言ってまた動き出した男たち
















いつも彼らをまとめる長はいない

2人の男もいない…


これが原因か……


















よく分からない。



まあ、
俺は……





上着を持って外に出た





空が高い

日は弱いが確かにさしている
少し伸びをした



〜〜〜




「様子はどう?」

優しい声で彼女はそう言った
「変わりないです。」










「みんなご飯食べてる?」






「はい。
大丈夫ですよ。」

















「俊平、くん無理してない?」


俺の顔を覗き込んだ彼女に笑顔を向ける
「大丈夫ですよ。」


「心配。」


彼女は寂しげに笑った















「紗智栞さんは自分のこととお子さんの心配しててください。
愛兎さんは俺が守りますから。」








「ふふ。
そうね。
ありがとう。」






病室を出て外を歩いた
たまには違う道……
と思って漣へは遠回りの道を選んだ

秋風が気持ちよかった
ここは……


大きな洋館が立ち並ぶ通り








………
……









坂をだいぶ登って来たらしい
遠くに海が見えた耳をすませば波の音が聞こえた




日が少し傾き始めた


















帰ろう……





帰路についた



















とんとん。








肩に振動を感じた。
振り返ったがそこには誰もいなかった
景色を切る途中
ただ
そこに
黒い影が見えた気がした。




ぱさ…




誰もいない代わりにそこに落ちた白い封筒



















宛名は


"中谷 俊平様"






















…俺。






封を切らずに急いで漣へ帰った
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