冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「本当に綺麗に消えるんだな」

 マーシャからの報告を受け、ライラは王の前で膝を折っていた。クラウスは不敵な笑みを浮かべながら、ライラの顔をまじまじと見つめる。

 ライラは深々と頭を下げた。

「陛下、今まで本当にありがとうございました。無事にこの日を迎えられたのは、陛下のご恩情があってこそです。感謝してもしきれません」

「なに。俺はなにもしていないさ。今まで苦労した分、これからは普通の娘として幸せに過ごせばいい」

 それからクラウスはライラの意向を尋ねる。ライラは自分の生まれた村に戻るつもりだと告げた。

「移動手段については、心配しなくていい。こちらで手筈を整えよう」

「ありがとうございます」

 王の申し出は正直、有難い。ライラは素直に受け入れる。別れの段取りが確実に進められる中、軋む胸を押さえていると玉座から声がかかった。

「他にも望むことがあるなら遠慮なく言え。お前には多大な迷惑をかけたからな」

 フューリエンの血を引く者として背負った運命を、なぜ国王がそこまで責任を感じるのか、ライラには理解できない。

 しかし、今はそれを追求するときではない。ライラはしばし迷い、静かに「陛下」とクラウスに呼びかけた。王を見上げ、ためらいがちに口を開く。

「では陛下の慈悲深さに甘えまして、ひとつだけかまいませんか?」

 ライラの真剣な面持ちに対し、王は笑みを崩さない。

「いいだろう。お前の望みを言ってみればいい」
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