この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
俊介の『治して這いあがってこい』という心の声が聞こえるようだった。

もちろん私もそう願ってる。

すると稔は「命令かよ」とケラケラ笑う。

明るい彼は、少しずつ自分の置かれた状況を受けとめ始めているんだろうか。


それから私たちは学校の様子を報告し始めた。


「毎日『稔は?』って誰かに聞かれるんだよ。お前、人気者だったんだな」
「知らなかった?」


俊介にしたり顔で返事をする稔は、表情が穏やかでホッとする。

告知を受けて取りみだしたときの面影はない。

でもきっと、胸には深い傷を負っているはず。
私は必死に踏ん張る稔を少しでも癒したい。


「多香美がずっと心配してるよ。ハードル片付けるたびに言ってる」

「あれ、恋のフラグ?」


私の発言に被せるように俊介がちゃかすので、心臓が激しく暴れだす。

稔と付き合い始めたことをまだ俊介に伝えていないから。
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