この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「私ね、あのケーキ屋さんのミルクレープが一番好き!」


鼓動の速まりを隠したまま、テンション高めの声で伝える。


「えっ、ミルクレープの請求? それって、プリンより高くない?」


顔色は悪いけれど稔の受け答えはしっかりしていて、苦しそうというわけでもなくて、ちょっと安心。


「じゃ、俺はなににしようか……」


俊介も乗ってくるので、口角を上げた。


「お前たち、たかりって言うんだぞ、それ」


稔はそう突っ込んだあと、プリンを口に運んでいる。


「うまいなぁ。幸せだな」


そりゃあ、いつもよりちょっと奮発はしたけど、そんなにしみじみと言われると妙にドキッとする。

またいつだって食べられるのに、大げさだ。


「三百五十円で幸せって、随分安い幸せだな」
「幸せに値段なんてないだろ。ふたりが来てくれてうれしかったよ」


どうしたんだろう。

稔は俊介とは違いものごし柔らかな人ではあるけれど、いつになく感慨深い様子で話すので、胸騒ぎが止まらない。
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