エテレイン

「言ったね？今言ったよね！？」



『え？』



「それじゃあ、お手伝いてあげるよ！
将来の！！」



歩みを止めて私の手を取って目をキラキラさせる知り合いに少し引く私。
いや、少しどころじゃないすごく引いた。



「いやぁお母さんもこれで安心するだろうな。
ってことで～はい、みんなちゅーもーく！！」



『あ！ちょっ！！まっ・・・』



防音の部屋でしまっていても聞こえてくるドラムの刻む重たいビートにギターの旋律。



ドアを開けずとも真剣に練習しているという事は誰にでも分かる。



あろうことか目の前のひとはそれを気にすることなく私を部屋の中に放り投げた。



そして一言。



「あとはよろ～。」



ガッシャンとしまった重たいドアに反して私の背中に刺さる冷ややかな視線。



振り向きたくはないが、私が動かないと事は進まない。



『え～と、練習中失礼します。』